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サルの島

あるところにそれなりにデカイ面積を持つ自然豊かな島があり、そこにはサルの群れが数十ほど存在していたとする。彼らは木の実を食べたり群れ同士で争ったり、そんな生活を数千世代数万年にわたって繰り返していた。

 

サルたちは海を渡る手段を持っていなかったため、彼らにとってはこの島こそが世界の全てだった。島の覇権を握ることは即ち世界征服を意味した。もし島にどんな動物がいるかを全て調べれば、それはこの世界の動物を全て知ったということを意味した。

 

「島の外にもサルがいるのだろうか?」

ある日そう考えたサルがいた。海の遙か向こうには同じくらい自然豊かな島があり、この島では見たこともないような生き物がいるのではないか?もしかすると自分たちと同等のレベルの知的生命体さえ存在するのではないか?しかしどんなに賢い個体たちが知恵を絞っても確かな答えを見つけることはできなかった。

 

実はこの島の存在は疾うの昔から人間に知られており、現在はインドネシア領ということになっている。にも拘わらず人間が何の手も加えていないのは、この島が特に何の変哲もない、「無人島」の一つに過ぎないからである。この無人島を開拓することなど造作もないが、そのメリットもないから放置されている。それだけのことだった。

 


 

サルたちは「この広い海の向こうには自分たちと同じく知的生命体がいるのではないか?」と想像し、確かにそれは正しかった。実際サルがいる島や大陸なんて地球上にいくらでもあるし、それどころかサルより遙かに高度な文明を持った、人間という存在さえもいた。だが人間からしてみれば、普通サルは知的生命体には数えない。だからその島は人間にとっては「無人島」である。

 

いま私たちは地球の外にも知的生命体が存在するのでは?と思いを馳せるけど、その生命体からしてみれば地球は無人の星なのかもしれない。